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ファツィオリ40周年記念事業 海老彰子リサイタル 11月28日(土)開催

世界で活躍する海老彰子が奏でる二つの世界
変奏曲の傑作 から 定評ある近現代・フランス作品 まで

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ファツィオリが2021年1月に創立40周年を迎えるにあたり、ファツィオリジャパンは日本における記念イベントの第一弾として、東京とパリを拠点に世界的で活躍するピアニスト海老彰子を迎えた記念リサイタルを11月に開催します。

昼夜2公演を同日開催、しかも異なる特別なプログラムです。昼公演ではドイツ語圏作曲家の変奏曲作品を、夜公演では近現代のフランスの作品を中心に、古典派から近現代までの音楽世界を一日で巡る贅沢なプログラムです。

海老彰子の成熟した演奏技巧と豊かな感性によって創り上げられる、端正かつ壮麗な世界、そして色鮮やかで幻想的な世界。ファツィオリの音色と共に、心の旅を楽しむ1日をお過ごしください。

・当リサイタルは、江東区文化コミュニティ財団策定の新型コロナウィル感染拡大予防ガイドラインに準拠し開催します。 詳細はこちらでご確認下さい。

・昼公演・夜公演ともにおよそ約1時間の演奏時間を予定しており、その間休憩時間はありません。

昼・夜公演通し券は弊社のみの取り扱いになっています。

お申し込みはこちら

ファツィオリ40周年記念 海老彰子ピアノリサイタル11月28日(土) 豊洲シビックセンターホール(5F)
・昼公演 開演14:00(開場13:30)
・夜公演 開演18:30(開場18:00)
・チケット発売は2020年9月10日(木)10時より
・全席指定
・入場料 一般 5,000円 学生 2,500円、
              昼・夜公演通し券 8,000円

◆また、海老彰子氏による公開マスタークラスを11月8日(日)15時に開催しますので、併せてご参照下さい。

     昼公演
W. A.モーツァルト
デュポールのメヌエットによる
 9つの変奏曲 ニ長調 K.573

L.v.ベートーヴェン
創作主題による32の変奏曲
 ハ短調 WoO.80

J. ブラームス
ヘンデルの主題による変奏曲と
 フーガ 変ロ長調 Op.24

     夜公演
G.フォーレ
主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73

武満徹
雨の樹素描 II
-オリヴィエ・メシアンの追憶に

C.ドビュッシー
ピアノのために

M.ラヴェル
夜のガスパール

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海老彰子の魅力を余すところなく聴くことのできる贅沢なリサイタル海老彰子プロフィール
音楽評論家 道下京子

私が海老彰子のピアノを初めて聴いたのは、いまから30年近く前。第10回ショパン国際ピアノコンクールのライヴ録音で、彼女の奏でるショパンのプレリュードやコンチェルトの1番を聴いた。卓越したテクニックから生み出される、輝くような音の色彩と深淵から湧き上がるような情熱に、深く心奪われた。彼女はそのコンクールで第5位(第4位なし)を受賞した。

東京藝大在学中に日本音楽コンクールで優勝、またロン=ティボー国際コンクールで第2位を受賞するなど、ショパン・コンクール以前から海老は次世代を担う若きピアニストとして注目を集めていた。パリと東京を軸とした彼女の音楽活動は40年を超え、演奏活動にとどまらず、教育面でも足跡を残している。

 この11月、海老は東京でリサイタルを開催する。ソーシャルディスタンスに配慮して客席数を少なくするために、ホール側から昼夜公演にしてはどうかとの提案があったという。そこで海老は、プログラムを練り直し、2公演のプログラムを編んだ。

 昼公演では、ドイツ語圏の作曲家の変奏曲によるプログラムだ。プログラムの冒頭を飾るのは、モーツアルトの《デュポールの主題による変奏曲》。デュポールはフランス革命を逃れ、プロイセンの国王に招かれてベルリンで活躍したフランス出身のチェリスト。彼の作曲したチェロ・ソナタのなかのメヌエットをもとに、モーツァルトは変奏曲を書き上げた。ベートーヴェンもベルリンを訪れ、デュポールのために《チェロ・ソナタ 第1番&第2番》を作曲。ベートーヴェンの《創作主題のための32の変奏曲》はその約10年後の作品で、バロック時代に盛んに行なわれていたバッソ・オスティナートの手法を取り入れている。そして、ブラームス《ヘンデルの主題による変奏曲》は、海老が日本音楽コンクールで演奏した想い出の作品。クララ・シューマンに捧げられたこの変奏曲は、ヘンデルの作品を主題とし、バロック時代の書法研究とブラームスの変奏手法が見事に融合している。

 そして、近現代のフランスの曲目の夜公演も、変奏曲に始まる。フォーレ《主題と変奏》は、シューマンの《交響的変奏曲》との関連も指摘される。武満《雨の樹素描 II-オリヴィエ・メシアンの追憶に》は、海老がCDにも収録した作曲家、大江光の父、健三郎の小説に示唆を得て書かれた。そして、前述のフォーレ作品と同時期に完成したドビュッシー《ピアノのために》は、ドビュッシー特有のピアニズムとともに、18世紀のフランス古典主義を継承した作品。ラヴェルは、さらに古き良きフランス・バロック時代に深く傾倒すると同時に、幻想的な芸術にも惹かれた。19世紀前期の詩人ベルトランの怪奇的で空想的な3つの詩をもとに、彼は《夜のガスパール》を作曲する。

 フランス作品に定評のある海老であるが、そのレパートリーは実に幅広い。その研ぎ澄まされた感性と比類なく安定した演奏技巧を礎として、ピアノ独奏だけではなく、室内楽などさまざまな分野にも取り組んでいる。室内楽の演奏では、全体を包み込むような彼女の揺るぎないピアノがアンサンブルを見事にまとめ上げ、何よりも奏者の一人ひとりから対話を引き出してゆく姿に強い感銘を受けた。私が聴いた演奏の多くはフランスの作曲家の作品であるが、その音楽の表現には浮薄な曖昧さは微塵もなく、構築感に富んだ演奏である。とりわけ、深いタッチから生み出される重みのあるふっくらとした音は雄弁で、多彩なダイナミクスを通して高貴にして繊細な音楽を創り上げてゆく。彼女の指から紡ぎ出される音の一つひとつには、魂と鮮やかな生のいぶきが宿り、その息遣いやリズム感にはヨーロッパの香りがする。

海老の魅力を余すところなく聴くことのできる贅沢なリサイタルとなるだろう。

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